映画二ノ国雑感 -1500円ほどの薄いカルピスの楽しみ方-
娯楽や芸術というのは虚無の存在である。
生産性もない、生活を便利にするわけではない。
だからこそ、芸術家やそれに従事する人たちは中々地位が上がらないし、今後もそのような時代が続いていくだろう。
しかし、その芸術が明日の希望や叡智を見出し、明日の糧となり、モチベーションを上げる要因になるのであればそれは虚無とはいえない。
映画版二ノ国はSNSを見ているとドラクエYSよりもヒドいという噂が立っていた、「虚無」と言わしめたようだがどうだろうか?
少なくとも私は視る価値はあった。
可もなく不可もなく及第点、評価の物差しになるようなアニメであった。
(ネタバレあり)
期待通りの予想、期待通りの展開
キッカケは、友人とマジカルミライ行く帰りに時間が余ったのでという理由である、前述の評価があったので、観たい半分観たくない半分な気持であった。
元々はジブリが制作協力、どこかタッチがジブリっぽい、しかし実際はOLMという老舗スタジオ。
見終わった感想としてストーリーはクソなのは認めざるを得ない、ユウの二ノ国の仮説に関してハルの意味不明な反論はいただけない、とはいえ、ユウとコトナのジェラシーや筋肉バカというキャラ付けは序盤で組み上がっていたので悪くはなかった。
一番意味が分からないのがアーシャの自分を殺してくれとせがむのシーンだ、全くアーシャという人格に対する行動が見いだせていない、この女は一国の姫という誇りはないのだろうか?稚拙すぎる印象を受けた。
全体的なストーリもありきたりな話だった、異世界に飛んでしまい、その国の姫が殺されそうになるから助けてくれといった側近が黒幕で、なんやかんや奇跡の力で解決する。
なんとも期待通りの予想、期待通りの展開の普通アニメである、2時間に対して物語が薄すぎるのである。
見せ場も大して超絶作画というわけでもない。
これを見るのであれば応炎上映しているプロメアをもう一回見た方がまだマシな気がする、あちらの方が展開は同じように雑だが、超絶作画や伏線などで乗り切っている、いや乗り切ろうとしている意気込みがある。
プロメアが金持ちの濃いカルピスであるのであれば映画二の国は水のように薄いカルピスであろうか。
薄いカルピスを飲んでいるから金持ちの濃いカルピスの美味しさがわかる
しかし、子供向けをターゲットにしたアニメ映画なのであれば、全然アリだ。
もしも私に息子がいたのであれば薄いカルピスを飲ませるだろう、私も薄いカルピスは好きだ。
元々レベルファイブのアニメは子供向けなところがおおい、イナズマイレブンを見たが、かなり無理のある展開だったが娯楽としては良い出来であった。
二の国の話もユウとハルは仲がいいが、あることをきっかけに仲が悪くなる、そして仲直りをして悪を打つ、お互いハッピーエンド、そして少しユウに関する伏線が少しある、そういった視点であればファンタジーのある話でよいのではないかと思う。
また、大人が見る分であれば、宮崎駿の抜けたジブリというのはこういうものなのかというのを感じる。
例えば、病に伏せているアーシャのシーンで祈祷師が踊るシーン、背景にユウとハルがいるのだが全く動かない、他のシーンでも大臣も動かない。
他にも、アーシャの森のシーンとかも背景がほとんどが動いていない。
また、カメラワークを見ると1on1のシーンが多いのである、重要人物二人と、背景の小さい人物(あるいは見えていない)、モブなど。
宮崎駿であれば間違いなく病に伏せてるシーンは全員を動かしているはずである、森のシーンも動植物全体を動かすだろう。
宮崎駿作品は人々や動物の群れや草木全体を動かすシーン、つまり風景全体を動かすシーンに力を入れている。
これが宮崎駿らしさを象徴している。
二の国は同じ絵柄でも監督が違うと切り取り方がこうも変わるのかというのを実感するのである。
新海誠や湯浅監督も全体を動かすシーンは出来ている。
例えば天気の子の雨の生物のシーンや、夜明けを告げるルーの歌のライブシーンを見るとわかるだろう、しかし、1on1のシーンを主眼に置いているように見える。
たつき監督はどうだろうか、登場人物に対して全体的フォーカスを当ててるあたりが宮崎駿監督に通じるものを持っていると感じる。
1500円の薄いカルピスかぁ・・・
二の国は薄い展開、薄い作画、薄い伏線でありながら楽しめる作品であった、特撮を見慣れている私にとっては、こういったチープな映画は好きな方ではある。
逆に考えればここまで普通な映画は珍しい、今後は、映画二の国を基準に面白かったかどうかを考えてもいいと思う。
しかし1500円は高いな・・・
レディースデーのように1000円の時に見るのが良いだろう。
そんな薄いカルピスを飲みながらこの話は終わりとする。